皆さんはじめまして! 株式会社スクウェア・エニックスより発売された『FOAMSTARS(フォームスターズ)』開発ディレクターを務めているKUMAです。2024年2月に無事本作をリリースすることができ、手にとって遊んでくださっている方々には本当に心から感謝しています。今回は社内でオファーがあり、連載記事を書かせていただくことになりました。まずは第一弾として「FOAMSTARSのバトルデザインはどうやって生まれたのか」について、開発秘話を赤裸々にお話してみようと思います!

 

FOAMSTARSが目指したもの

企画の初期段階、株式会社スクウェア・エニックスのクリエイティブ・ディレクター、齋藤力さん(以下りっきーさん)よりお話をいただいた時から、本作は「身近で親しい人たちと上質で幸せな時間を過ごせるゲーム」を目指して進んできました。

当時から「シャボン玉を使って撃ちあう対戦シューター」というところは決まっていて、この時まだ新卒4年目だった自分が、シューターであってシューターでないような、新しい対戦ゲームが作れる予感にワクワクしていたことを思い出します。
 

開発初期段階

そうこうして、プロトタイプの作成が始まります。
開発スタート時のメンバーはわずか5人。

  • クリエイティブ・ディレクターのりっきーさん
  • 開発ディレクターのKUMA(僕です!)
  • おそらくこの世で最も陽気なプログラマーN
  • 若手のクールな技巧派プログラマーK
  • FF級イケメンイタリア人プランナーA

新規プロジェクトとしては濃厚すぎるほど楽しいメンツがそろっていました。

当時はトイロジック開発室の一角にある小さな会議室を占領して、5人だけの開発室でプロトタイプを制作していました。それはさながら部活やサークルのようで、「仕事」という言葉を忘れ、とにかく面白いゲームを作るために集まった仲間たち、という感じでした。開発中は笑顔が溢れ、この頃のことは今思い出しても心が躍る体験です。

「身近で親しい人たちと上質で幸せな時間を過ごせるゲーム」を作るためには、まずは自分たちが「遊んでいて幸せだ」と感じられるように作ろう、と感じた瞬間でもありました。
 

シャボン玉で撃ちあう

「シャボン玉を使って撃ちあうシューター」を作るために、まずは根幹となるバトルデザインの設計からスタートしました。従来のシューターと、シャボン玉で撃ちあうシューターとの違いは何なのか、そこから考え始めます。

そこでたどりついた特徴としては大きく3つありました。

  • 弾のサイズが大きいこと(=攻撃が見える)
  • 飛ぶスピードが遅いこと(=攻撃を避けられる)
  • ふわふわ感、弾力感を感じられること(=視覚や手触り的に気持ちいい)

こういった特徴から「敵の攻撃を見て」「避けあいながら」「シャボン玉の特性を活用して戦うシューター」にしよう!と、話がまとまります。

本来シューターは「いかに上手くエイムして弾を当てるか」が根幹の部分となります。そこに対して本作は「いかに上手く弾を当てられる状況を作るか」が重視されるゲームデザインを意識しました。

そこには「身近で親しい人と上質で幸せな時間を過ごせる」という命題に対して「エイムが苦手な人でも、楽しくゲームをプレイしてほしい」という思いもありました。

しかし、シューターとしては前例のない挑戦となります。「エイムして」「一瞬で弾が飛んで当たる」そんなシューターとして当たり前の部分から覆す設計に、本当に自分たちが進んでいる道が正しいのか、迷うこともありました。

その迷いを払拭する方法は、日々検証を繰り返し、論理的に設計し、何度も何度もプレイして、自分たちが迷うことなく「面白い!」といえる状態を目指すことだけでした。

 

シャボン玉ならではの遊び

プロトタイプの検証中は、メンバー内で何度も議論を重ねました

今になってよかったと思うのは、プロトタイプ開発では小さな部屋で5人が近くで開発していたこともあり、プランナーやプログラマーといった職種の垣根がなく、話し合いをするときは全員で意見を出し合ったことです。

プランナーがただ仕様を考えるだけだったり、プログラマーがただコードを打つだけだったりではなく、全員が「企画を一から支える当事者」でした。何か小さなものを1つ実装するときでも、その意図を全員が相互に理解していることで「それならこうしたらどう?」とプログラマーから閃きが生まれることも何度もありました。こういった積み重ねが今のFOAMSTARSを支えているのだと思います。

こうして生まれた最初のシャボンバトルでは、撃ったシャボン玉がそのままフワフワと地面に残り、それを壁にしてガードしたり、再度飛ばして攻撃に活用したり、たくさんのシャボン玉をくっつけて範囲攻撃をしたり、踏みつけて大ジャンプしたりと、シャボンならではの多彩なアクションがふんだんにできるゲームとなりました。フィールドに常にたくさんのシャボン玉が浮いている見た目も魅力の1つだったと思います。

 

泡の誕生

こうした流れを経て、プロトタイプでのシャボン玉を使ったバトルが完成します。実際にプレイしてみるととても楽しいのですが、攻撃手段がシャボン玉しかなく、ゲームの広がりとしては物足りなさが残っていました。

また、弾が遅くて当てにくい分、場に残ったシャボン玉で相手を追い詰めていく設計を目指していましたが、直線的にしか飛ばないシャボン玉では十分に追い詰めることができませんでした。

そこで着目したのが、当時「フロートレベル」と呼んでいた仕様でした。これは、シャボン玉を使ったゲームだから…ということで、プレイヤーのHP量を泡によって示すシステムで「攻撃をくらえばくらうほど体に泡をまとってモコモコになっていく」というものです。実際にこの見た目はプロトタイプを遊んでくれた人たちからも好評で、りっきーさんから「シャボン玉だけじゃなくて泡の要素もメインで取り入れていこう」というアイディアが生まれました。

こうして誕生したのが、今の『FOAMSTARS』の軸でもある「泡」の要素です。

 

泡を使ったバトルデザイン

「泡なのだから、撃った泡がフィールドに残ると楽しそう!」というところから「泡がフィールドに残り、撃てば撃つほどモコモコと堆積していく」という要素が誕生します。

根幹の設計段階で「敵の弾を見て避けあうバトル」を主軸としていたため、「堆積した泡を遮蔽や高台として活用できる」という要素は相乗効果を生む形となりました。同時に、泡であれば放物線を描いて相手の後ろにも飛ばすことができるため「堆積させた泡で相手を追い込む」ことができ、課題として残っていた最後のピースがカチッとハマるような感覚になったことを今でも覚えています。

そして、「弾が目に見えるサイズ」「弾速が遅い」「地形で敵を追い詰める」という特徴から、意図的にゲームテンポを少し落とすことにしました。これは僕自身がMOBAタイトル(『Heroes of Newerth』や『Dota 2』、『League of Legends』は大好きなタイトルで、僕の青春時代をともに過ごしてきたゲームでもあります…!)に影響を受けていることもあるのですが、ゲームテンポが下がることで、プレイヤーに「考える時間と余地」が発生します。

この「考える時間と余地」を使って、エイムすることだけでなく「残弾数の管理」や「リロードのタイミング」、「限られた弾をどのように使うか」など「泡を使ってどうやって敵を追い込むか」ということを考えられるように設計しました。

また、弾速が遅い点から、エイムだけで弾を当てることが難しいため「リソース管理で優位にたったプレイヤーは、エイムが苦手でも撃ちあいに勝つことができる」という状態を実現できるよう意識しています。リロードの隙を誘発することで、接近のチャンスとなり、接近することでエイムがそれほど得意でなくとも弾が当てられる、という構造を目指しました。

同時に、攻め時・引き時の駆け引きが生まれ、攻め時になるまでにどのように泡を展開しておくか、引き時の退路をどう確保しておくか、が工夫できるゲームデザインを目指しています。(一方で、リロードキャンセルが欲しいというご意見も多数いただいています。お客様のご意見は大切にしたいと思っているので、ゲームデザインを損なわずにリロードのストレスを緩和する方法を現在模索中です。)

最終的には「それほどエイムをしなくても楽しく撃ちあいができる」ことと「ゲームに慣れてきて上達を目指すほど、地形やリソース管理など考えることが増えてくる」ことから「遊びやすいけど奥が深い」というゲームになることを願って、設計を続けています

 

さいごに

目下、ユーザーの皆様からもたくさんのご意見をいただき、日々改善のために開発メンバー一同尽力しています。まだ少し時間がかかってしまうかもしれませんが、毎日少しでも良いゲームになるよう、メンバー全員が作品に愛を持って接しています。

どうか、『FOAMSTARS』がユーザーの皆様からも愛され「身近で親しい人たちと上質で幸せな時間を過ごせる」そんなゲームになりますよう…。

以上、『FOAMSTARS』のバトルデザインの軌跡でした。

正直お話できることはまだまだ無限にあるのですが、文字数がとんでもないことになってしまうので、今回はこれくらいに。 それではまた…!

著者紹介 KUMA
MMORPGやオンライン対戦ゲームをこよなく愛する、生粋のオンラインゲーマー。『FOAMSTARS』では開発ディレクターを担当。フレッシュなものが好き。イチオシのTCGはFlesh and Blood。好きなデスメタルバンドはFleshgod Apocalypse。


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