こんにちは、イトーです。
今は株式会社スクウェア・エニックスより発売された『FOAMSTARS』というゲームのアクションを作ってます。(途中参加ですけど)
FOAMSTARS、たくさんのキャラが出るゲームです。たくさんのキャラを作るのはすごく大変だったので、ここにその段取りを書き残しておこうと……思います………… パタリ_(¦3 」∠)_
目次
はじめに
『FOAMSTARS』は10種以上のキャラから1人を選んで、4 vs 4 で戦い合うオンライン対戦アクションゲームです。
シューティングっぽいゲームですが、アクションの文法的には格闘とかロボットアクションにも近く、発生や硬直を気にして差し合うような要素が入ってます。まあゲーム内容については開発ディレクターの記事を読んでもらうとして、本稿では
- たくさんのキャラクターが出る「対戦アクションゲーム」で、
- リファレンスとなるキャラクターが作成済である
という状態から、さらにキャラクターを追加する際の流れ(と苦労話)を書きます。
キャラクター制作の流れ
おおざっぱにはこう。
(1) コンセプトを考える
『FOAMSTARS』では、ビジュアル・設定ベースで新規キャラが企画されることが多めです。
1人目の追加キャラクター「Mr.ボンバヘッド」はこんなキャラクターアートが先にありました。
……第一弾追加キャラに、アフロ頭の大男を……? という困惑を感じつつ、着手します。
キャラの特徴をいっぱい出す
性別、体型、体重、性格、種族、職業、所持品……、考え付く限り出して、それから絞る。能力でも演技でも、このキャラならではの魅力をふんだんに盛り込むために限界まで掘り下げます。
このアフロ男の場合はこんな感じ。
- 大柄なプロレスラー
- ⇒ パワフルなアクションで、ダイナミックな手ごたえがほしい!
- ひょうきんなパフォーマー
- ⇒ ちょっと鬱陶しいくらい格好つけながら戦いそう!
ユニークな遊びを考える
次に、既存キャラクター・また追加予定のキャラクターを見渡して、新たにどんな特徴があれば新鮮な面白さとなるかを考えます。「こんなの見たことない、やってみたい!」と思ってもらえる特徴じゃないと新しく作る意味がないので、がんばって考えます。
で、アフロ男はこんなコンセプトになりました。
ヘビー級プロレスアタッカー
コンセプトには、
- 立ち回り
- 強みと弱み
- スピード感
- 得意な役割
- 演技特徴
なんかをなるべく端的に盛り込みます。
あえて分解するとこう。本作らしく「敵が作った地形(アワ)を突破・破壊しやすい」という特徴も盛り込んでます。
(2) 検証キャラクターの仮実装
コンセプトが決まったら、さっさと動くものを作ってテストします。確認項目は以下。
- 一目でアクションの意味が理解できるか。
- 要素のサイズ感は妥当か。(弾とか……)
- 攻撃の発生、範囲が視認できるか。
- 発生、持続、硬直フレームは妥当か。
- 上手い下手が生まれるような幅・深みがあるか。
この時点では大がかりなコストはかけません。デザインリソースもプログラム実装も、重要物に絞ってサクサクと仮のものを用意してもらいます。そしたらゲームデザイナーがスクリプトで勝手に組みます。勝手に作るの最高! 楽しい!!
アフロ男の時は先述のコンセプトに従って、とりあえずこういうものを作りました。
アクション | スキル名 | 案 |
---|---|---|
通常ショット | – | ロケット弾でドカドカ範囲攻撃 |
スキル1 | ボンバーダイブ | 空中から落下するボディプレス 高所から落ちるほど強くなる |
スキル2 | ボンバーホッパー | ジャンプ台設置 残弾を回復するとか、ぶつけて攻撃できるとかの付加効果アリ |
超必殺 | バストアムーブ | 広範囲の状態異常ボム。当たると相手がしばらく踊り続ける。 |
テストは、最初は「1 vs 1」。近くにいる人に声かけて、コントローラーを握らせて、満足いくまでバトルします。基本的なところ(フレームの勝ち負け性能とか)がだいたいできたら、本番同様の「4 vs 4」テストに回します。
せっかくなので、テストを通じて実際に出た問題を2つ紹介します。
Case.A:ボディプレス攻撃が大ざっぱすぎ
うーん、誰が操作しても「ジャンプ移動するスキデカ大攻撃」にしかならないので、もうちょっとお客さんが工夫できる幅がほしい。
地上版は突進ワザにしてみた。被弾リスクが高まる代わりに攻撃発生が早くて、硬直も少なめ。使い分けが生まれたんじゃないかなあ。
Case.B:超必殺が強すぎ
これは「当たると10秒間、敵がダンスし続ける (=行動不能になる)」という効果の範囲攻撃です。……多分もう分かった人もいると思うんですが、テストを通じてこんな問題が浮上しました。
- 強すぎ
- 盛り上がらなさすぎ
- 踊ってる間のプレイヤー、ヒマすぎ
仮に効果時間を短縮しても小さくまとまってしまうだけでしょう。うーん、「やられた側のプレイヤーに、ダンス時間を短縮できるチャレンジが発生する」という形で一挙解決できまいか?
そんなことを考えていた当時の提案資料が、以下のもの。(一部抜粋)
考え付いた瞬間「こいつは名案!」と膝を打ち、翌日プロジェクトメンバーに怒られました。
まあできないことはないけど、面白くするまでに時間がかかりそうだったので再検討。最終的には「味方がダッシュ状態で接触したら、ダンス状態が解除される」というものにしました。味方同士のふれあいが生まれるところがいいポイント。
(3) 本仕様を書く
テストプレイで検証キャラクターの面白さを確認できたら、本格的に作る準備をします。設計のし直し・仕様書の書き直しです。
実際の仕様書がこんな感じ。
「分かる人が見て分かればいいか」と割り切った、ざっくり仕様書。検証である程度まで動くものを作ってたので、書くまでもないことは書いてません。(ただ面倒くさがりなだけとも言います)
これを実装してもらったらまたテスト。
(4) テスト調整テスト調整テスト調整調整調整調整調整
本実装後は「お客様にお見せすること」を前提としてテスト。だいたいは検証済なので、最終的な詰めがメインです。
とりわけ「画的な美しさ」と「遊び面での分かりやすさ」を両立することに時間を割きます。発注のときに要件をしっかり示し、アーティストとゲームデザイナーが連携することが大事です。
手ざわりは最後の最後まで調整します。
- モーション速度
- 攻撃判定
- パッド振動
- カメラ
- ヒット演出全般
- etc, etc…
対戦ゲームのテストはたくさんの人を巻き込むので、1回1回のテストにはなるべく集中。自分がMr.ボンバヘッドを使ったり、味方に使ってもらって連携を試したり、相手チームのボンバヘッドと相対してかけひきが成り立つか見たり、色んなマップで試したり……
FBをまとめて、すぐ修正して、1~2日後にまたテストを繰り返します。
(5) 完成!
テスト + 調整を繰り返し、お客様にお渡ししていい出来になったら完成です!
叶うならば無限に調整をかけたいのですが、FOAMSTARS のようなアップデートタイトルはお客様をお待たせしないことも大事です。ここまでの工程を可能な限り手早く踏み、効率的に面白くしていきたいといつも思ってます。
新規キャラの製作フロー、他の会社さんはどんな感じなんでしょう。教えてくれる方がいたら X でぜひ連絡ください。情報交換しましょう!
おしまい。
 
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