こんにちは、イトーです。ちょっと前だと『NieR Replicant ver.1.22474487139…』というゲームのディレクターやってました。

弊社、最近は会社アピールの一環として各スタッフが技術ブログを書いてるみたいです。うんうん皆がんばってるね……と他人事のようにベガ立ちしてたら、めでたく私にも執筆の社命が下りました。

えーと、じゃあ「ヒット演出」について書きます。愛社精神!

 

さて、ざっと思いあたるヒット演出は以下の通り。

………………いっぱいありますね。

ヒット演出は、プレイヤーが敵に攻撃を当てたとき「ダメージを与えた手ごたえ」を気持ちよく・分かりやすく与えてくれるものです。
ご覧通り種類が多く毎回仕事で説明するのが面倒なので、この機会に実例付きで一覧化しておこうと思います。

実例は、

から引用させていただきます。

 

【1】ヒットエフェクト

攻撃のヒット時にバシッと出すエフェクト。

  1. 気持ちいい手ごたえの演出
  2. 威力の強弱の表現
  3. 斬撃、刺突、殴打、燃焼といった攻撃特徴の表現

といった役割を担います。

とりあえず派手にした方がいいですが、やりすぎると画面を覆ってしまってゴチャゴチャし始めるので、シルエットの面積を減らしつつ細かいパーティクルを散らすなど色々工夫を強いられます。

他にも例えば、

  • 連続でバシバシ出るものは、短尺かつ形状にランダムを入れる
  • 弾が遠くで当たったときも強い手ごたえを返すよう、どんな距離でも一定の大きさで出す
  • マルチプレイゲームの場合は、自分の攻撃のヒットエフェクトだけ他より強調する
  • 敵モデルに埋まって見えなくならないよう、必ず手前に描画する

など、色々と細工をすることが多いです。

 

どんなカメラからでもしっかり視認できるヒットエフェクト!引用:NieR:Automata

でも何より気持ちいいことが大事なので、迷うくらいならフラッシュとか焚いて派手にすればよいかなと。地味よりはマシ!

なおPS3時代のゲームは派手かつ抽象的な表現が主流でしたが、バージョンアップしたNieR Replicantでは現代風にすべく、「斬撃方向や血が飛び散る向き」も力の加わり方に合わせてしっかり変えて、手ごたえをより具体的に演出しています。

原作とv1.22の比較動画。原作のヒット演出も派手でスキ。引用:NieR Replicant, NieR Replicant ver.1.22474487139…

 

【2】ヒットSE、ボイス

ほとんどヒットエフェクトとセットで使う要素。
なので、気を付けることもヒットエフェクトと大体同じ。

敵を倒したことの強調のため「やられボイス」を再生することがありますが、「人の声」は良くも悪くも耳に残りやすいので、要所で効果的に使ってあげたいですね。

【3】ヒットストップ(スローモー)

ヒットの瞬間に画面を停止、あるいはスローにするもの。

  1. 高威力の演出
  2. 重い手ごたえの表現
  3. 命中の瞬間を分かりやすくする

といった役割を担います。
このとき画面全体をピタッと止めずにヒットエフェクトだけ等倍速で流すと、ヒット演出が際立ちます。

コンマ何秒が印象を分ける。美しすぎるヒットストップ、ぜひコマ送りで見てほしい。引用:NieR:Automata

また「ダメージを与えた・受けた瞬間をしっかり目に残す」ことで、忙しいバトルの最中で「何が起きたのか」プレイヤーに認識してもらうためにも便利。メリット多いです。

プロテスで「攻撃が弾かれた」ことや、コンボ中に「ダメージを受けた」ことが分かりやすく伝わるヒットスローモー。
際立てたいシーンで、止める。引用:Final Fantasy 16

 

【4】ダメージモーション

被弾した側がとるリアクションの演技。のけぞったり、ふっとんだり。
気持ちいい手ごたえの演出になる他、いくつかの役割があります。

  1. 被弾時のスキ(硬直フレーム)の調整
  2. 彼我の位置調整

など。
敵に攻撃を与えたあと更に追撃するチャンスを作ったり、逆に敵の強力な攻撃を受けた演出をしつつ、ふっとばして仕切り直させたり。

またダメージはモーションのバリエーションがかさみがちな箇所なので、減らせるものは減らした方がいいです。
例えば、

  • のけぞり・小(前後)
    • 空中版(前後)
  • のけぞり・大(前後)
    • 空中版(前後)
  • ふっとび開始(前後)
    • 落下ループ(前後)
    • 着地(前後)
    • 壁衝突(前後)
    • 受け身
  • 打ち上げふっとび
    • 落下ループ
    • 着地

このくらいのバリエーションがあったとして、計20モーション

もし「のけぞり・小A」「のけぞり・小B」というようなパターンを更に増やすと、かけ合わせで総数がえらいことになります。大変だ。

とはいえ頻繁に見るものなので、プレイヤーもエネミーもなるべくパターンを増やしたいところ。引用:NieR Replicant ver.1.22474487139…

あと「加算モーション」にも触れときます。

これは「攻撃が当たったとき、敵にリアクションしてほしいけど、いちいち敵の動きを止めさせたくはない」という場合に使える手です。
移動や攻撃といった敵のモーションは流したまま、そこに「ブルッと震えるアニメーションを合成する」ことでヒットの手ごたえを作る、というもの。

よくわかんない人は下の動画をスローで見てください。

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頭がグワワンと振り回されるような、ごく短い揺れ加算。(カメラもちょっと揺れ)
斬撃によるのけぞりは加算でなく、普通のリアクションモーション。引用:NieR:Automata

身体全体が震えるので、敵が大きいとアニメーションが汚く見えたり、オーバーリアクションに見えてしまうこともあります。そんなときは身体の一部にだけ加算モーションを適用したり、他のヒット演出で補うとよいです。

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ホワイトドラゴン。ダメージ時、左脚や胸元が個別に揺れてることが分かります。引用:Final Fantasy 16

 

【5】ノックバック

ヒット時に、敵あるいは自分の位置を動かすこと。
たいてい「ダメージモーション」とセットで使います。なので、役割もだいたい同じ。

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モーションでなく数値で移動量を制御する場合は、「初速」あるいは「動く距離」を指定して「減速度」パラメータで速度カーブを制御する、という実装が多いのかな?引用:NieR Replicant ver.1.22474487139…

敵だけでなく、直接攻撃した「自分」にノックバックを与えることでも

  • 敵の重量感の表現
  • 彼我の間合いの調整(特に壁際)

という効果が見込めます
対戦ゲームだと「壁ハメ」の対策の一つにもなりますね。

攻撃を防ぐ手甲が付いてるときだけノックバック。「斬撃が跳ね返される手ごたえ」を感じる!引用:NieR:Automata

 

【6】モデルシェイク

ダメージを与えた敵に「ブルッと震わせるようなアニメーション」を与えることで手ごたえを作るもの……あれ、これ「加算モーション」の項目でもう言わなかった?

というわけでもなく、こちらはモーション同士をブレンドする加算モーションと違って、プログラム的にモデルを揺らすもの。

たいして変わらないように見えるでしょうが加算モーションと比べると、

  • リアリティラインが低めになりやすく、
  • 距離が遠くても目立たせやすい

といった違いがあります。

(2) についてはヒットエフェクトなんかでも触れましたが、距離が遠い場合は大きめに揺らすように補正するとよいです。あとカメラに対して常に並行方向に揺らした方がキレイ。

『NieR』『Final Fantasy』シリーズのようにリアルな表現をしたいゲームだとあまり向きませんが、デフォルメの効いたゲームではオススメ。

 

【7】カメラシェイク

ダメージを与えた瞬間にカメラを揺らすもの。

一般には近くで爆発があったときとか、銃撃したときの衝撃の演出にカメラを揺らすと思いますが、その延長。

引用:NieR Replicant ver.1.22474487139…

カメラが遠くてキャラが小さいゲームだと、キャラの攻撃とカメラシェイクの関連性が分かりにくい場合もあることには注意。あと頻繁に揺らすと画面がガチャつくので、使う場合は要所で。

……ちょっと書き疲れてきました! あと2つがんばります!

【8】ダメージフラッシュ

ダメージを与えた敵のモデルをフラッシュさせるもの。

大勢の敵と乱戦中でも、誰がダメージを受けたか一目で分かる!
引用::Warlander

他のアクションと同居できるという点で「加算モーション」「モデルシェイク」に近いですが、
特に大人数対戦みたいな「ゴチャゴチャした状況でも、攻撃が当たったかどうかの情報をしっかり伝えたい」というゲームに向いてそう。

部位破壊対象の手甲は全面を発光。ダメージが通る本体はビリビリ柄のマスクをかけて発光。
引用:NieR:Automata

また敵が巨大すぎるなどの理由から、「加算モーション」「モデルシェイク」が使いづらい、あるいは手ごたえに乏しい場合にも。

エフェクトと合わせて表現を工夫すれば、敵が「赤熱した」とか「エネルギーが発光した」みたいな演出にもできると思います。

【9】フォースフィードバック

ヒット時にコントローラーを揺らすもの。「パッド振動」とも。

最後の連撃以降でパッド振動。(伝わってくれ!)
引用:NieR Replicant ver.1.22474487139…

被弾時に使うことが多いですが、自分が攻撃を当てたときにも使ってOK。

狙いは「物理的な衝撃をコントローラーを通じて体感させること」なので、ぶん殴りのような強い直接攻撃が命中したタイミングに。

これも頻繁に使いすぎると、被弾を伝えるためのパッド振動が紛れて気づかれづらくなったりするので、やはり要所で。

あと手ざわりの味付けが濃くなりがちなので、上品に仕上げたいなら使わない判断もアリ。
例えば『NieR Replicant ver.1.22474487139…』だと荒っぽい手ごたえを出したいシーンで使っていますが、踊るように素早く戦う『NieR: Automata』では採用されていないようです。

 

【10】その他の画面効果

その他いろいろ。例えば「ブラー」とか。

ごく薄いので分かりづらいと思いますが、最後のヒットストップと一緒にブワッと。
引用:NieR Replicant ver.1.22474487139…

非常にシンプルなラジアルブラーですが、カメラシェイクなどでは表現しづらい、命中の衝撃とともに大気を伝わる振動波みたいなものが表現できると思います。

この他にも「レティクルのヒットマーク」とか「自分と敵を除いた背景全体をバーンとインパクトのある画に一瞬差し替え」(あの格闘ゲームとかあの格闘ゲームでやってますよね。私もやりたい)とか、いろいろあると思うんですけど、これ以上はキリがないのでこのあたりで。

 

他にもいいヒット演出があったら、X(旧Twitter) で私に教えてください。

おしまい。

著者紹介 伊藤佐樹 / Saki Ito
2012年にトイロジックに新卒入社。『Happy Wars』で運営・移植ディレクター、未発表タイトルでリードアクションゲームデザイナーを担当の後、『NieR Replicant ver.1.22474487139…』にて開発ディレクターを務める。


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