どうもこんにちは。トイロジック企画課のNです。今年2月に株式会社スクウェア・エニックスより発売された『FOAMSTARS』でリードプランナーをしています。
この記事では新規PvPプロジェクトのレベルデザインについて、どのように考えて作成したのか『FOAMSTARS』の事例を紹介します。
「レベルを作ったことがない人」「PvPのレベルは作ったことがない人」が何からやればいいかわからないとき、参考にしてもらえればと思います。内容的には「完成まで」でなく「何からはじめて、どうしていけばいいのか」のとっかかりになれば幸いです。
それではよろしくお願いします。
レベルとは
レベルはよく「お皿」にたとえられますよね。料理を盛り付けるお皿がレベルの役割だ! と。実際そうだと思います。様々な要素を遊ぶ場所、お客さんに見ていただく場所がレベルですからね。
そんな盛り付けを頼まれたとき、とりあえず平たいお皿を用意した結果、出てきた料理が汁ものだったらどうでしょう。盛り付けられなくはないですが、量は少ないわ食べづらいわで料理をおいしく食べられる状態ではありませんよね?(「狐と鶴の料理」のような。これはターゲットユーザーの話なのでちょっと違いますけど。)
ようするに盛り付ける「料理」がなんなのか、事前に知らないとポテンシャルを最大限引き出せないわけです。
では、PvPにおける料理とはなんなのか。私は「バトル」と「ルール」から生まれる「プレイヤー同士の駆け引き」だと思っています。
※リリーストレーラーのスクリーンショット(『FOAMSTARS』リリーストレーラー (youtube.com))
『FOAMSTARS』でいうと「アワを使って撃ち合うこと」が「バトル」で、「SMASH THE STAR」などのルールがそのまま「ルール」です。
アクションゲームなどシングルプレイのゲームでは、ストーリーや障害(エネミーやギミック)によってプレイヤーの感情を動かしますが、PvPでは特に「プレイヤー同士の駆け引き」で感情を動かすと思っています。ここで生まれる感情がプロジェクトで与えたい体験、すなわちコンセプトではないでしょうか。(過去に先輩プランナーが公開した記事でも同じようなことを記載していますが、実際重要だと思います。ので、改めて。)
そのため、「バトル」と「ルール」から生まれる「プレイヤー同士の駆け引き」をレベルで体験できないと、コンセプトが達成できないゲームとなってしまいます。最終的にお客さんへ提供されるのは「盛り付けられた料理」ですから、レベルデザインは重要な役回りですね。
少し話がそれましたね。つまり、「バトル」と「ルール」を理解していないとPvPのレベルは作成できない、ということです。レベルデザイナーとしてアサインされたら、まず、そのプロジェクトの「バトル」と「ルール」がどういったものなのか、内容をよく考察し、理解・すり合わせるところから始めたいです。
「バトル」と「ルール」が重要なのは分かりました。では、レベルを作るときに「バトル」と「ルール」どちらを重視したらいいんでしょう?結論、「双方重要」で「プロジェクトによる」だと思います。
例えば、今回話す『FOAMSTARS』はバトルコンセプトが一般的なシューターと違います。そのため、「バトル」に重きをおいてレベルを考えていきました。
※バトルデザインについては弊社ディレクターの記事をご覧ください
以下、「バトル」を基準に考えるときどう考えたのか、『FOAMSTARS』の例を書いていきます。
バトルに合った地形
『FOAMSTARS』では以下の流れで検討を進めました。
全部書くととても長くなってしまうので、この記事の目的「とっかかりの提示」のため、1番の「既存ゲームとの違い」をどのように考えたか、記載します。残りはまた今度ということで……。
既存ゲームとの違い
アサインされたプロジェクトが「バトル」と「ルール」のどちらに重きを置いているか、ふわっとはわかると思います。ですが、「ふわっと」の理解ではレベルを作れないですよね。なのでまず、なにが既存ゲームと異なり、重要なのか考察し、文章化しました。また、そこからどんな駆け引きがあるかを考えてみました。駆け引きがプレイヤーの感情を動かすからですね。おさらいでした。
では、具体的にどうだったか、『FOAMSTARS』の例を記載します。まずテストプレイをしました。
※「バトル」で想定する遊びができていない場合はコンセプトの箇条書きから考察するしかありません。当然精度は低いので、作り直し前提で考えます。「バトル」がある程度整ったらこのフローに乗ってみるのも手だと思います。
そのときに感じたわかりやすい「既存ゲームとの違い」は以下だと思いました。
- 弾速が遅いから当てにくい
- 弾が大きくて遅いから視認してからでも避けられる
- 弾を外したら遮蔽ができる/あえて外して退路を断つ
※書き出す際は簡潔に箇条書きにした方がわかりやすいと思います。次に考察する「駆け引き」と思考がまざらないようにするためです。また、説明するとき相手の理解が早くなるので何かと便利です。
この特徴がほかのシューターと違うわけですが、これだけ渡されても困っちゃいますよね。レベルを作るうえで必要なのは、この特徴から導き出される「駆け引き」でした。(おさらいです)そのため、次に考えたことは「これらの特徴からどんな駆け引きが生まれるか」でした。全て書くとこれまた長くなるので、ひとつだけ、どのように考えたか例示します。
- 弾速が遅いから当てにくい
この特徴からどのような駆け引きが生まれるでしょうか?
- 弾速が遅いと、中距離以遠は照準を合わせて射撃しても当たりません。そのため、基本は偏差撃ちで戦闘することになります。
- ただ、偏差撃ちだと確実に弾が当たるわけではありません。ではどうすればいいか。偏差撃ちしなくてもいい距離まで近づけばよいのです。そうすれば弾がほぼ確実に当たります。
- ですが、敵と自分がお互いに「まっすぐ行ってぶっとばす」だと相打ちになってしまいます。相手を一方的に倒すためにはどうすればよいでしょうか。敵に撃たれず/気づかれずに接近すればよいのです。
- 上記から敵の攻撃を受けずに、敵にばれずにどうやって接近するかを考える駆け引きが発生します。
と、いった具合に「バトル」の特徴から体験させたい「駆け引き」を考えていきました。
「駆け引き」がわかったらどうするか。これが達成できるような地形を考えていけばいいワケですね。実例を挙げると「Aqua Blast Adventures」は以下の点を意識しています。
- 高台が強い形状
- 回り込んで高台にアクセスできるルート
これらを設けることで「敵の攻撃を受けずに、敵にばれずにどうやって接近するかを考える駆け引き」が生まれるように意識しています。
まとめ
レベル作成の際、どこから手を付け始めたらいいか?を『FOAMSTARS』を例に見てみました。ポイントをまとめるとこんな感じです。
- 「ゲームの中身」=「駆け引き」を理解しないとレベルはつくれない
- そのプロジェクトは「バトル」と「ルール」どちらを重視しているかを知る
- 「バトル」もしくは「ルール」によって生まれる「駆け引き」を考察する
- 「駆け引き」が発生するレベルを考える
レベルつくるなら己を知れ、ってことでした。長くなってしまったのでここから先は別の機会に。
それでは。
 
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