皆さん、こんにちは。企画課のOです。トイロジックが開発した『Warlander』のレベルデザインを担当しました。『Warlander』は100人が5チームに分かれて攻め合うゲームです。このとんでもスケールのゲームで、どのようにレベルデザインを行ったか。その過程について、ご紹介できればと思います。

まずはこれまでのおさらいです。過去2回の記事で紹介した通り、5チーム戦の制作フローは以下の4工程に分けられます。

  1. 目指すべきコンセプトの理解
  2. ステージ全体のプロトタイプ設計
  3. 各エリアの詳細設計
  4. ビジュアル調整

これまでの工程を踏まえて、今回は各エリアの詳細設計時に意識したことを皆さんに紹介できればと思います。

ビジュアル調整については、背景デザイナーさんと協力しながら進めていく工程になるので、企画視点の話は今回が最後になります。こちらの工程については、機会があったらまた記事にしたいと思います

 

コンセプトから重点を導き出す

さて、実際にエリアの設計をしようとなっても何から決めていくべきか悩みますよね。そんなときも助けになってくれるのがコンセプトです。Warlanderでは「戦況に応じた戦略的でスペクタクルな戦争体験を提供すること」を目指していました。ここでは、コンセプトから各エリアのあるべき姿を考えた一例を紹介できればと思います。
 
Warlanderはコンセプトから戦場に持ち込む5体のキャラクターの武器やスキルを組み換え、プレイヤーに自分なりの部隊編成を楽しませたいという方針が決まっていました。そのため、「ある武器ではプレイヤーがこういう工夫ができる」、「あるスキルでは使い場所を考えることで効果が増幅する」といった、各武器やスキルを使う際にプレイヤーが立ち回りを工夫できるステージ構成にする事を一つの設計の起点にしました。もちろんこれは要件の一つに過ぎず、最終的にはコンセプトから考えうる複数の要件を組み合わせてエリアを設計していきます。
 

このようにそのゲームの目指すべき方向によって、必要とされるレベルデザインの在り方が変化します。形式的にレベルデザインをするのではなく、何に重点を置くべきかコンセプトから導き出す必要があるのです。
 

立ち回りの工夫を引き出すレベルデザイン

では先ほど要件の一例としてあげた武器やスキルを使ってどのように戦うことができるか、具体的な駆け引きを想定してみましょう。

まずは武器を一例に見てみます。魔法使いの「ウィンドブラスト」という武器は、比較的ゆっくりと直線的に地面を這って進み、敵を貫通する武器です。

この武器の特性からいくつか駆け引きを考えてみましょう。この時の注意点として、Warlanderは対戦ゲームなので、攻撃側と受け手側の両方について考える必要があります。

  • ゆっくりとした弾速

    • 攻撃側:道幅が狭いエリアに誘い込むと避けられづらく有利
    • 受け手側:移動の制限がない広いエリアだと避けやすい
  • 直線的な攻撃

    • 攻撃側:複数の敵を直線的に捉えると、一度の攻撃で複数人にダメージを与えられる
    • 受け手側:敵から見て、味方との立ち位置が直線的にならないように立ち位置を変える
  • 地面を這う攻撃
    • 攻撃側:自身と敵の間に段差がないような位置関係を意識する
    • 受け手側:段差を利用して、敵の攻撃を避ける
※段差地形の例

これらの特性を考慮し、エリア内でも道幅の広さの強弱をつけたり、一部のエリアで意図的に段差地形を採用しています。この他にも、あらゆる武器の特性からプレイヤーの立ち回りの工夫や駆け引きを想定し、それをエリア設計の一つの参考にしました。

次はスキルを例に見てみましょう! 戦士の「吹き飛ばし」という当てると敵を進行方向に吹き飛ばすスキルがあります。

このスキルを活かすにはどのように地形があるとよいでしょうか……

そうですね。直感的に敵を落下させたいという気持ちが湧いてきますよね!

しかし、当てられれば必ず敵を落下させられるのでは、プレイヤーの工夫の余地がありません。また、攻撃を受けた側も、当てられると必ず落下させられるのでは工夫の余地がなく理不尽に感じますよね。ステージの中で吹き飛ばされても大丈夫な方向を用意することで、位置関係の駆け引きが加わります。

今回は一例として、スキルの特性からプレイヤーの立ち回りの工夫や駆け引きを想定し、エリア設計に活かすまでの過程を紹介しましたが、当然これ以外の要素についても考える必要があります。

3つあるクラスの役割や、第2回で話した各エリアごとの目指すべき戦闘体験など、コンセプトから導き出せるあらゆる要素を組み合わせて設計していくことが重要です。

 

まとめ

最後にこの連載を振り返ってみましょう。

一連の制作フローから、そのゲームのコンセプトをみつめ、それに基づいてレベルデザインしていくことが重要だと分かります。それも一つの視点だけでなく、コンセプトを多角的な視点から見つめることで、より良いものになるでしょう。

Warlanderも発売から1年半が経ち、アップデートでアクションの改善や追加が行われてきました。ステージも、それに合わせて改善を重ねていく必要があり、日々アップデートを検討しています。常にゲームにとって最良のレベルになるよう、これからも試行錯誤は続きます。

今回お伝えしきれなかった内容は、また別の記事でご紹介できれば幸いです。それではまた、お会いしましょう!

著者紹介 O
Warlanderでレベルデザインを担当。
最近朝必ず行くカフェでエッグサンドをテイクアウトする。

1か月同じ商品を頼んだ結果、券売機で注文前に作り始めてくれるようになった。嬉しさと同時に、笑顔の店員さんに言いたくても言えない。

1週間前から、海老アボカドが食べたい。

 


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